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「いいんですか?博士……。
なんかあまり喜んでない様
でしたが……」
「何、アレにはGPSも
付いてるんだ。
誰かに転売されようと
十分追跡できる」
「でも、もしお蔵入り
なんて事になったら……」
「その時はまた誰かに新素体を
渡すまでさ。
……しばらく様子を見よう」
「そうですね……」
ナノクスを後にした俺は
テレビ会館1階の外に出た。
空は、まだ曇りがかって
いたが、太陽が雲の隙間から
顔を覗かせて虹を作っていた。
丁度、11年前に見た
あの時の虹が……。
(東京でも虹の綺麗さは
変わらんか……)
その時、彼女との思い出が
昨日の如く、
俺の脳裏を駆け巡った。
11年前、山梨・甲府市立医院。
俺は、彼女の病室へ
見舞いに来ていた。
「あっ、幸ちゃん。見て。
虹だよ、虹。しかも二つ!」
病室のベッドから起き上がり、
指を指す彼女の方向の空に
虹が出来ていた。
しかも上下に二つ。
「初めて見たな。あんな虹は」
「なんか縁起いいなぁ……。
早く退院出来るかもね」
俺に微笑む彼女。
「早く元気になって、
学校に来いよ」
「心配してくれてるんだ。
ありがと」
微笑する彼女。
「そりゃあ、俺の……。
おっと」
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