卯月

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「いて…っ」 頭をしたたかに地面にぶつけた。 と、思った。 でも、何か感触が違う。 板だ、 板にぶつけた。 『言い忘れたが、 己に触れている時は、 お前の姿は人に見えぬし、 時も、止まる。 だが、いくらなんでも こんな場所では落ち着かぬであろう。 場所を変えてやる』 俺を押し倒したまま、 ソイツは言った。 さっきの優しさは消えて、 冷たい物言いだった。 どこか、木造の建物の中らしい、 ということは分かった。 でも、暗くてよく分からない。 だから、 ソイツがどんな表情なのかも 分からない。 長い髪が、 俺の顔に垂れた。 ソイツは、俺の頬を 人差し指で、 つ…と、強く引っかいた。 『冷や汗か』 どうやら、俺の汗をぬぐったらしい。 『ほんに、初心な餓鬼だ』 -お前だって、ガキじゃねーか。 そう思ったけど、 言葉にならなかった。
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