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光陰矢の如し。時が過ぎるのはとても早い。アレから一週間という時が経過していた。
「はい、リオン」
「ああ、ありがと」
リオンは病院のベッドで半身を起き上がらせながら、手渡された林檎を口に運ぶ。だが、味はしない。心の内は別のものが支配していた。
それに、
「エーシェ。仕事はどうしたのさ。俺に構ってないでそっちに行けよ」
傍らにはエーシェが笑顔で林檎の皮をむいていた。リオンの言葉で、より一層笑う。
「駄目よ。目を離したらあなたのことだもの、飛び出すに決まってる」
「ちぇ」
かれこれ一週間この調子である。そろそろ失った魔力も戻ってきた。今にも飛び出していきたいのだが、いかんせんエーシェの包囲網は厚い。
(早く、行かないといけないってのに)
リオンは傍らのたんすの上に置かれた剣に目をやる。相棒の成れの果て。だが、まだ治る見込みはある。その希望の元である、リストンスのところに今すぐにも行きたいのに……。
「気持ちはわかるわ」
エーシェにはことの詳細を伝えてある。魔法によって治癒を施された彼女も、まだ全快ではないのだが、全快が退院の条件だった。
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