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もう授業が終わったにも関わらず、席についたまま佐伯はただぼーっと周りを見ていた。
見ていた、というより観察していたと言う方が正しいのかも知れない。
まるで、周りを見極めるようなそんな視線。
そんな佐伯に視線を集中させ、じっと見つめる。
「…あの、何ですか?」
案の定というか、やはり彼は気付いた。
「同じクラスの朽木です、よろしくね」
そして話は冒頭へと戻る。
「なあなあ、朽木って下の名前何てゆーのっ」
広い校舎を歩きながらキラキラとした瞳で蜜蜂に問い掛ける。よほどこの学園の設備や構造がめずらしいのだろうか。
「蜜蜂だよ、あだ名ははにーだけど」
不本意ながら、とつぶやくと彼は楽しそうに笑った。
「かわいくていーじゃん。じゃあ改めてよろしくな、はにー!オレのことはすずでいーから」
「うん、よろしくねすずくん」
先程、どうしても気になった彼の敬語を指摘した結果、普通に話す、ということになった。
…だってあれはわざとらしすぎるような。事情があるのはわかっているけど、違和感がありすぎる。
「なあ、はにーって生徒会の役員なんだろ?すげーな!」
「…そんなにすごくないよ。でも、困ったことがあったら言ってね」
すずの笑顔はすごく暖かくて。
周りにいる人達さえも照らすような優しいものだった。
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