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自分はダメな子供だった。父親はいない、いやどこかで生きていたのかもしれない。でもそんなこと、興味すらなかった。
母親が自分を育てるために精一杯働いているのを近くで見てきた自分にとって、父親は母を置いてどこかへ行った自分勝手な人だ、という認識があったから。
当然、生活は苦しく余裕など少しもなかった。
子供とは無邪気で残酷なものだ。自分に対してのいじめは耐えられた。
自分の世界は母親中心に回っていた。
ある日、学校からボロボロになって帰ってきた。そんな自分を見て、母は言った。
どうしてもっと上手く立ち回れないの、面倒くさい子ね
そう言った母の顔は今でも忘れられない。
その時母は毎日の労働に疲れて苛立っていたのだろう。もちろん元来優しい母はすぐに泣いて謝った。
けれど、俺の世界はもう壊れていた。
母親に拒絶されたことによって。
元々、俺は精神的に弱かったのかもしれない。一時期は人と会うにも体が震えるほどだった。
今の俺はそこまでではない。多分落ち着いてきたのは夕月がいたから。
でもやっぱり人からあからさまな拒絶を受けると顔が強張り、体が動かなくなる。
誰からも好かれたい、そう思うのは自分の傲慢さ故か。
残ったのは、虚勢の笑顔と欠陥だらけの自分。
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