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あっけらかんとしたその口調に赤木は呆れたように慎を見る。 「何を言い出すんだ、あんたは」 「ちょっと、そんな冷たい目で見ないでくれる。そのままだよ、この場はオレ達とverenoの皆が何とかするから」 蜜蜂くんと行けばいいじゃない。 「…あいつらがリンのために集まってくれたのに、俺は何もしていない」 いまだ渋る様子を見せる赤木に、慎がため息をついた。 「だからverenoの皆が手伝ってくれてんのは遊佐くんのカリスマ性なんだってば。リンくんのためだけ、なんてものじゃない」 小さくつぶやかれた言葉は、赤木に届くことなく消えていった。 「遊佐くんは色んな意味で鈍いからなあ」 「ねぇ、蜜蜂くんはどうしてほしい?」 突然に、慎は車の後部座席でじっと事の次第を伺っていた蜜蜂に話を向ける。 ちらっと見た赤木の顔には戸惑いが浮かんでいた。 二人の会話はよくわからないままだが、どうやら赤木はここに残るか迷っているらしい。 だったら。 利己的な考えだと思った。だってこの場所で顛末を見届けたい、と赤木は思っているはずで。 更紗くんがいる理由は分からないけれど、更紗が率いていた彼らも自分とすずを助けてくれた赤木の仲間なのだろう。 でも、 「…一緒にいて傍にいてよ、あかぎ。お願い」 口から自然について出てきた、甘えたような媚びた声に自分でも驚いた。 嫌気がさす。 けれど、赤木から離れて震えが止まらない体や思い出したように痛む腕。 頭の中がぐちゃぐちゃで、不意に泣きそうになった。 .
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