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「君は多分何にもしゃべらないだろうから、オレが一方的に気の済むまで話そうかな」 自分勝手にも聞こえるそんな台詞を吐いて、男は目を細めた。 男が正面を向いていることだけが幸いだった。自分の、引き攣っているであろう顔を隠すように俯く。 すべてが終わった後、慎は個人的に今回の事件の顛末を調べた。きっかけは小さな違和感からだった。 「verenoよりも小数のメンバーで構成された名も無いチーム、そのトップがエイ、君だった。オレは君を知ってたよ」 エイ達はチームとはいっても、チーム同士の抗争には関わらず中立の立場だった。拠点としているのは南埠頭の倉庫、その辺りではそれなりに名が知れている、つまりエイを筆頭とするチームは小数ながらも強い影響力で一目置かれていたのだ。 誰の側にもついたりしない、孤高の強力なチーム。 彼らはたしかに他のチームを脅かす存在で、それ故に……彼らを潰そうと動き出すチームもあったのだ。 エイが率いるチームに対抗するため、手始めとして自分たちのシマを増やそうと考えたそのチームは、少し遠い街に足を踏み入れる。何も知らないままに。 「愚かにも、verenoのシマを荒らしてしまった。喧嘩、強奪、暴行。どうやら女の子にも手を出していたみたいだ。最低な奴らだね」 verenoのメンバーはすぐにアジトを調べ出し、ひとまず潰しはしたものの、奴らの残党が仕返しにverenoのたまり場に急襲した。 そして、奴らが捨て台詞として残した言葉。 “トップは南埠頭の倉庫にいる” それが今回の事件の発端となった。 .
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