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…なんて、考えても仕方のないことだけれど。
肩の打撲は全治三週間。
あの事件からもう既に二週間は経過していたが、検査入院をしていたため、寮の部屋に戻ってこれたのは数日前。
部屋に戻ってきて、やっと一息つけた気がする。
そしてその日から赤木は毎日部屋に通ってくれていた。
放課後は生徒会室に出て仕事をしているらしい。赤木と更紗が生徒会役員の補助、という名目で生徒会室に入れるのは、あと数えるくらいしか無かった。
絶対安静と言われている自分はせめて部屋でできる仕事だけでも、とみんなに頼んでみたが取り合ってくれなかった。どうやら予想以上に心配をかけてしまっているらしい。
赤木は生徒会室で仕事をする、ということがなかったから、やっぱり申し訳ない。それだけ仕事が忙しいんだろう。
…そしてなぜかお昼休みに部屋に来てくれるし。
赤木の手が置かれている頭はそのままに、目線だけを上げる。
何かを考え込むように、じっと見つめられた。
「お前にも話した方がいいよな」
「…何を?」
赤木の真面目な顔につられて、表情を引き締める。
「慎の喫茶店さ、儲かってるように見えるか?」
慎さんの話だろうか。
「うーん、この前行ったときはお客さんいなかったね。看板も出してなかったし、場所も複雑だったような…」
唐突な話題に思い返してみると、あまり積極的に営業しているように思えなかった。赤木はそんな疑問を読み取ったかのように答える。
「あの店は一般人から隠したい場所なんだよ」
「…一般人?」
赤木の言い方に違和感を感じる。一般人、ってそれじゃまるで。
「あの業界では堅気っつうのか。慎はヤクザなんだよ」
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