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時計の時刻を確認した夕月は、首を押さえて小さく呻いている蜜蜂を平然と見遣る。 「情けない顔するな。お前らも終業式、いくぞ」 夕月はにやりと後ろを振り返る。呆然と事の成り行きを見守っていた役員たちもつられて笑った。 「はにーには生徒会代表の挨拶があったな。生徒に期待されてるぞ、お前の元気な姿が見られるって」 「…うん」 「「そうだよ!みんな心配してたんだから」」 それは皆なりの激励の言葉。あの夕月でさえも。 込み上げてくる嬉しさに微笑んだ。 まだ自分に仕事を任せてくれる。 あの時何もできなかった無力な自分を責めるでもなく、必要としてくれる。 …首はものすごい痛いけれど。寝違えたような違和感。 少しだけ恨みがましく感じて夕月を見る。 当の夕月は素知らぬ顔だ。 「今日までは赤木と更紗も生徒会役員補助の名目で俺達に付いてきてもらうぞ」 反射的に振り返る。 終業式だからか、制服をきちんと着込んでいる。赤木は一言頷いただけだった。けれど、久しぶりに聞く赤木の声に懐かしさを感じた。 …あの日以来。 赤木は部屋に来ることはなかった。 つまり、赤木と顔を合わせるのは初めてなわけで。 赤木がこちらに視線を向ける。視線が重なった。 「……っ」 あ。 ぱっと顔を背ける形で目を反らしてしまった。 どうしよう。 どんな風に接したらいいのか、わからない。今まではどうしていた? 恐る恐る赤木を見たが、もう目が合うことはなかった。それに一抹の寂しさ。 「おい。そろそろ体育館に移動だ」 夕月は蜜蜂を見て目を細める。 そうだ、代表の挨拶。 一瞬だけ躊躇う。…ダメだ、しっかりしなければ。そう言い聞かせて、自分を奮い立たせるようにゆっくりと一歩踏み出した。 .
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