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「旅行?」 更紗は意味がわからない、といった様子で双子を見る。 びくつきながらも透たちは返事を返す。 「ああのね、さらくんとゆうくんはもう生徒会のお仕事終わりでしょ?」 「だだから、お疲れ会というかお別れ会というか、そんなものを開催したいなって思ったの」 「夏休みだから避暑がてらどこか遊びに行きたいなって」 「もちろん主役はさらくんとゆうくんで!」 更紗は困ったように目を泳がせる。 双子たちもそんな更紗の反応にしゅん、と落ち込む。 暗い空気の中で、赤木は渋々と助け船を出した。 「ナツは照れてるだけだから。自分のために何かをされるとか、まっすぐなことに慣れてねえんだよ」 更紗は顔をしかめる。更紗の睨みつけるような視線は難無く交わした。 「「デレktkr!!」」 滅多に表情を変えない更紗が動揺している姿に、双子はにやついている。 先程の落ち込んだそぶりは演技だったのか。 諦めたように息をついた更紗はさらに尋ねる。 「わかりましたよ。行けばいいんでしょう。で、行き先はどこになったんですか?」 双子は手元の紙を再度覗き込んでにこりと笑った。 「軽井沢!?」 急な計画に驚いたのは蜜蜂も同じこと。 部屋に訪れてきた双子にお茶を出して一息ついた後。 「うん!さらくんが決めたんだよ」 「ゆうくんはどこでも良いって言うから」 実際には、更紗は場所を選ばされただけなのだが。 夏休みの旅行の計画を聞いた蜜蜂はふと思い出す。 赤木があの日言っていた、書記に呼び出されているというのはこのことだったのだ。 「…ゆうくん?えっと、それは赤木も行くんだよね」 「「もちろん!」」 聞かずとも分かっていることだった。 行かないとは言えない。楽しそうに話している双子を横目に、蜜蜂は小さく微笑んだ。 .
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