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その一方で。
赤木はただ淡々と流れる景色を目に映している。夏の風が髪を掬う。
楽しく、ないのだろうか。だとしたらそれはきっと自分のせい。
…嫌?ならどうしてあんなことをしたの。聞くことができない自分に自嘲する。
答えを聞くのが、怖い。
「ユウさん。お菓子どーぞ」
車内に設置されたテーブルに広げられたスナック菓子やチョコレート。更紗が気を回して買ってきたものだ。
食べたことがない、と言ってのけた双子と零に庶民を分かってもらうため、らしい。
「サンキュ」
はい、と差し出されたお菓子を受け取るため、体を反転させる。
自然とみんなの輪に入るようになった形。
「ていうかお前らって仲良かったんだな」
零がそんな二人を見てつぶやいた。
「「そうそう!僕たちも気になってたんだよね」」
双子もそれに乗っかるように身を乗り出した。
そういえば。
あの時も赤木は当たり前のように更紗たちを率いていた。何も聞いてはいないが、更紗もすずや赤木と同じ族の一員だということは分かる。
二人は顔を見合わせた。後、更紗があはは、と笑う。
「だってユウさん、怖い噂いっぱい流れてるような人ですよ?そんな人と仲良さ気に話したりしてたら、面倒なことになりますよー」
確実に場が凍る。
…訳もなく。
「まあそれは分かるな」
「「いかにも不良さんだしね!」」
意地の悪い笑みを浮かべている。
「…おいてめえら、ふざけんなよ」
そして赤木すらもため息をついただけだった。
どうやら生徒会に溶け込んでいたのは更紗だけではないらしい。
赤木と更紗が表立って会話をしていなかったのには、別の理由があるのだろう。それを聞き出そうとは思わなかった。
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