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「ここは…」 更紗が双子を振り返る。なんとなく更紗が言いたいことが分かってしまう。 「「僕たちの会社の系列なんだ」」 …僕たちの? その意味を理解した更紗はあ、そうと苦い顔で頷いた。 双子は首を傾げたがすぐに顔を見合わせ、眉を寄せる。彼らの言動、行動は示し合わせたように重なった。 「でもね、今がちょうどシーズンだし、貸し切りは出来なかったんだ」 「それは当然だよ。ここは会社が経営してるんだから。僕たちの別荘とは違うんだよ」 兄の透が口を尖らせた弟を諌める。けれど透も少しだけつまらなそうだ。 「べつに気にしないよ?透たちの家の稼業の迷惑にはなりたくないから」 夏休みに避暑地のペンションの部屋を貸し出してくれただけでもありがたいのだ。 「はにーに同意」 「…ていうか別荘って誰も突っ込まないんですね」 双子が先頭を歩きながらペンション内の案内をする。 建物は五階建てで、一階がロビーとカフェルーム。客がくつろぐ場所だ。そしてそれから上の階が全て客室。 ふかふかの絨毯が敷き詰められている階段を上がりながら双子がふと立ち止まり、くるりと振り向く。 荷物は後に車で届くそうで、今は皆身軽な格好だ。 「思い出した!」 「そういえば!」 「「部屋割どうする?」」 零がああ、と相槌を打った。 ペンションは満室なのだろう。 「適当でよくね?」 「「そっか。じゃあ僕たちで一緒ね」」 双子は当たり前、といったようにお互いの手を取り合う。 「…零とオレで一部屋で」 「いつの間に呼び捨て…?」 「いいですよね」 「はい」 にこりと笑って零を黙らせた更紗は蜜蜂を見る。 「副会長はユウさんと一緒ですね」 え? .
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