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「だから、午後はみんなで街観光しようって」 「僕ソフトクリーム食べたい!」 「ええ?それより漬物買いたいんだけど」 「…漬物?」 楽しそうにこれからの予定を語る双子はとてもほほえましい。 けれど蜜蜂はそれに反して表情を曇らせる。 「…ごめんね、今日はずっとここにいるよ」 「「えーっ、どうして!?」」 双子の悲壮感漂う大声に周りからの視線が集まる。蜜蜂は慌てて周囲のお客に頭を下げた。 「二人とも声抑えて!」 人差し指を口に添える。 返ってきたのは幾分小さめの声。 「なんで行けないの?」 「はにくんいないとつまんない」 潤んだ大きな目でじっと見上げられ、言葉に詰まる。 外で遊ぶ気分にはなれなかった。 まだ頭の中がぐちゃぐちゃで、何をしていてもきっと上の空になってしまう。 なんて言えるはずもなかった。 困り切っていたときに助け船。 「はにーは今日具合悪いんだってよ」 後ろからやってきた零が双子の頭を軽く叩く。 「だからまた明日な」 諭すように言った。 「「そうなの!?」」 「…あ、うん」 双子に嘘をついてしまったことに罪悪感。 ちらっと零を見ると目が合う。苦笑いを浮かべていた。 「でも、明日は一緒に観光するから」 せっかく旅行にきたのだから、ずっともやもやした気持ちを抱えているなんてもったいない。 「うん、じゃあ明日は絶対ね」 「ゆっくり休んでね」 二人の優しさを感じて小さく頷いた。 .
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