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時は少し遡る。
早朝、二人の静かな寝息だけが微かに響く部屋に不躾なドアベルの音が鳴った。
ぱちり、とすぐに目を覚ました更紗は体を起こして隣のベッドを見遣る。
まだ零は起きていない。
しばし考えた更紗は掛け布団を被って目を閉じた。
ベルは鳴り続ける。間隔が段々と狭くなっていることから訪問者が苛立ち始めていることが伺える。
「うるせえな、誰だよ…」
「……」
「おい更紗、起きてるかー?」
「……」
「寝てんのかよ」
この間にもベルは鳴り続けている。
零は渋々といったように立ち上がり玄関へと向かう。
まだ朝も早いというのに、こんな時間に部屋を訪ねてくる礼儀知らずは誰だ。
眠い目をこすりながらオートロックの扉を開けた零はそのまま静止した。
「…赤木」
「はよ」
「本当に早えよ」
思わず本音を零してしまい、慌てて自分の口を塞ぐ。
赤木遊佐。
オレはこいつが嫌いだ。
学園では決して良いとは言えない生活態度だし、ろくでもない噂ばかりが横行しているからだ。
そんな奴に生徒会の仕事を一時期とはいえ任せるなんて断固反対だったのだが、まあそれは双子たちに押し切られ。
生徒会室には来ないが割り当てられた仕事はきちんとこなしてくる。
それならば良いじゃないか。
…なんて思う訳がない。
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