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何度目かの深いため息をついた。 更紗たちの部屋は見通しも良く、涼しげな風が入り込んでくる。 開けた窓からは緑の繁る森が見下ろせた。 赤木は窓枠に腰掛け、ふと思う。 蜜蜂は今日はペンションに残ると言っていた。自室にいるのだろうか。 「眩しいんですけど」 部屋に入ってきた更紗が手をかざし目を細めた。 日当たりまでも良いこの部屋は日差しが直撃する。 全開にしている窓はそのままにカーテンだけを閉めた。 「悪い。ていうかなんでお前までここに居るんだよ」 赤木が不審そうに横目で見遣る。 その視線に肩をすくめてみせた。 「ひどいですねー。ほら、ユウさん一人だとすぐあれこれ考えちゃうから」 心配だったんですよ。 その声色からは何も読み取れない。 赤木と目が合えばにこりと嫌味のない笑顔を浮かべた。 「で、手出しちゃったんですか?」 「…は?」 「いや、だから副会長になんかしちゃってたんでしょ。この旅行の以前に」 平然としている更紗を凝視。 「……」 「やっぱり」 更紗が不意に赤木に近付く。 腰掛ける赤木と同じ目線の位置。手を付いてゆっくりと顔を近づけていく。 鼻先が触れる寸前、更紗は口元だけで笑う。 「キスでもしちゃいました?」 「……」 「黙秘権はありません。目泳いでますけど」 呆れたように小さく息をついた。頬に触れる。 その瞬間。 ガチャ、という音とともに部屋の扉が開いた。 「…お前ら何やってんだ!?」 意外な人物に、驚いたのはこっちの方だった。 .
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