3002人が本棚に入れています
本棚に追加
/304ページ
だって、これが“今まで通り”だろう?
決して近いとはいえない距離。
考えるまでもなく、それが自分と彼の関係。
分かっていたことだ。
「つっかれたー!」
満はぐったりと椅子の背もたれに体重をかける。
「でも楽しかったよね」
「うん、すっごい満足!」
四人が座れるテーブルの一つ余った椅子の上には、たくさんの大小揃った紙袋。
「はにくんも?」
「もちろん、楽しかったよ」
控え目に尋ねてきた透に笑顔を返す。よかった、とはにかんで見せる。
あのあと。二つのグループに別れて街を散策することとなり、自分は双子と一緒に行動することになった。
「ご注文はお決まりですか?」
ウェイターさんがテーブルの前までやって来て、にこりと微笑みかけてくる。
慌てて双子はメニューが書かれた紙を取った。双子が行きたいと言っていたカフェに入ったのはいいものの、涼むのに気を取られていたのだ。
あれが良い、これが良いと悩み始めた双子にちらっとウェイターさんを窺う。
「すみません、手間取っちゃって」
彼女は驚いたように蜜蜂を見たが、すぐに明るい声を上げる。
「ここのメニューはどれも美味しいですから。私だっていつもオーナーにお願いして作って貰っちゃうんです」
あらためて真正面から見ると、まさに美少女という言葉が似合う容貌で、思わずどきまぎしてしまう。
女の子を見る機会が無い、というのもあるが。
敬遠されがちであろう見た目とは裏腹に、性格は快活らしい。
人懐っこい笑みを浮かべている。
.
最初のコメントを投稿しよう!