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「…ねえ」 透が顔を上げて眉をひそめる。 それにつられたように、満もちらりと視線だけをよこす。 双子が言いたいことは分かっていた。 さっきまでの和やかなカフェの空気と一変して、ぎすぎすとした店内。 原因は。 「お姉さん超かわいいじゃん」 「バイトいつ終わんのー?オレらと遊ぼーよ」 そう、彼女へのナンパ。 メニューを聞きに行った際、旅行者らしい男性客に絡まれてしまったのだ。 注文をするでもなく彼女に執拗に話しかけている。 けれど他のバイトの人たちも女性ばかりで間に入ることもできない。相手が観光客だというのもあるのだろう。 彼女も困ったように目を伏せるだけだった。 「「なにあれ」」 双子たちが嫌悪感をあらわに声をそろえる。 たしかに我慢できない状況だ。 だが今ここで騒ぎを起こしたら、彼女にもこの店にも迷惑をかけてしまう。 まさに板挟みの状態。 けれど。 「なあ無視すんなよ」 しびれを切らした一人が苛立ったように立ち上がり、彼女の腕をつかむ。 その瞬間、彼女の表情が困惑から明らかな怯えに変わった。 それを目にした蜜蜂は顔をしかめる。 そして。 「手、放してあげてください」 反射的に立ち上がり、声を上げてしまった。 店内の人の視線が集まっていることに気まずさを感じる。 ああ、もう仕方ない。できるだけ穏便に済ませなければ。 .
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