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「大丈夫?」
店内に戻ってきた蜜蜂は所在なげに立ち尽くす彼女に声をかけた。
蜜蜂はぐるりと辺りを見回す。事態を収めるといっても店の中でどうこうしたという訳ではない。
懸念していた状況は免れた、らしい。
店内も特に変わったことはなく、客はいつのまにか事態が収束されたことに首を傾げていた。
そしてそれは当の本人である蜜蜂も同じ。
数分前のこと。
まず男達を説得しようと外へ連れ出した。そこまではいい。すると何故か今まで悪態をついていた彼らが蜜蜂の顔をまじまじと見て顔を真っ赤にして黙り込んだのだ。それを見た双子はため息をついて携帯を取り出す。
あっという間に黒いスーツを着込んだガタイのいい男達が彼らを引きずるように車へ運び込み、走り去っていった。
流れるようなスムーズな動きに蜜蜂はついていけない。
結局、男達はぼーっとしたまま反抗もせず連れて行かれたのだ。説得する手間も省けたのだが。
「…え、あれ?」
双子は呆れたように顔を見合わせたが肩をすくませただけだった。
「面食いってイヤだよね」
「ていうかはにくんが男だって気付いてなかったよね」
「…?」
腑に落ちない蜜蜂だったが、慌てて店内に翻した。
「ありがとうございました」
彼女は裏に戻ってから深く頭を下げた。
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