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ええっ、と蜜蜂は慌てて彼女の肩に手をかける。
彼女が一瞬だけぴくりと震え、恐る恐る顔を上げた。
蜜蜂はゆっくりと手を放す。
「当たり前のことしただけだから」
とは言っても、実際のところ何もしていないのだけど。彼女が目を丸くする。
そして。
「ふふっ」
笑われた。
「…え」
「いや、だって!お兄さんかっこよすぎるよ」
目を細めて笑っている彼女に、小さく息をついた。
「どーいたしまして」
「棒読み!」
蜜蜂もつられて笑った。
「…ありがとう」
彼女が微笑むと場が明るくなる。むず痒い気分になって言葉につまってしまった。
なにか話題を、と考えた蜜蜂はあ、と声を上げる。
「名前聞いてもいいかな?」
彼女が小さく手を打つ。
「ああ!えっと私は…」
ちょうどその時。
カランカラン、という涼やかなベルの音が響く。
「いらっしゃいませ…って、え!?」
反射的に裏から顔をのぞかせた彼女は入ってきた客を見て唖然としたように口をぽかりと開ける。
どうしたのだろう。
怪訝そうに首をかしげた蜜蜂はふと思い立って裏から出る。
もしかしてさっきの男達がまた?
「あれ」
なんて心配はまったくもって杞憂だった。考えてみればあのスーツの男達が彼らをやすやすと逃がすはずもない。
「あっ、はにー!遅くなってごめんなっ」
現れたのはここで待ち合わせていた彼ら。
零、更紗、夕月とすずだった。
そして後に続くように入ってきた赤木。
蜜蜂の隣に立っていた彼女がすっと足を動かす。
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