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「えっと、はにーくん?」 雪乃が首をかしげる。 双子が自分の名前を呼んでいるのを聞いたのだろう。 いきなり雪乃が話しかける対象が自分になったのに驚いた。 「はじめまして、雪乃です」 「あ、はい。蜜蜂です」 「……」 「……」 唐突に自己紹介を始められ、話が読めず沈黙。 「…何?」 赤木が怪訝そうな顔で二人を見る。 雪乃がすごい勢いで赤木を振り返った。 「あのね、さっき私が絡まれてたの助けてくれたの!」 「え、あの何もしてないっていうか。実際に追い払ったのは透たち、じゃなくてスーツの…」 「は?」 勢い込んでまくし立てる雪乃とやんわりと訂正を入れる蜜蜂。 どちらの話もしどろもどろで理解に苦しむ。 ちらっと蜜蜂を見ると視線が合って、困ったように俯いた。 自分を見てなんとも言えない複雑そうな顔。 何だ、今の。 違和感を覚えたがどうするわけにもいかない。 手元のアイスティーのグラスに差されているストローをぎゅっと強く押し付けた。 「助けた?」 「うん!だからさっき名前聞こうとしてて」 何となく推測できた。 雪乃の容姿は人の目を引くものだから、男からの誘いは多い。 けれど雪乃は“駄目”だ。本人がそう言っていたのを思い出して、あの時のように苦い気持ちになる。 「いつもはどうしてんだ」 「叔父さんがオーナーだからそういうお客さんは追い払ってくれてるんだけど、今日は仕入れで居なくて」 聞きたいことはたくさんあったがひとまずそれはいい。 .
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