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体ごと蜜蜂に向き直る。 「ありがとな、副会長」 ぽかん、と口を開けた蜜蜂は何か言いたそうにも見えたが小さく首を振っただけだった。 「怪我は?」 「ない、よ」 まただ。 おかしな表情。なんとも表現できない。 「あのさ、ユウくん」 二人を見比べるように視線をさ迷わせていた雪乃がおずおずと声を上げる。 「なんだ」 素っ気なくも聞こえる一言だが、雪乃は気にしない。 それとは違う理由で雪乃は言い淀んでいた。 「…今夜、ここに泊まってかない?」 「「「「え?」」」」 一同の声が合わさった瞬間だった。 どうやら雪乃たちの話に聞き耳を立てていたようだ。目を丸くしたり、固まったり、にやにやと笑みを浮かべたり。 反応は様々だったが、彼らが下世話な想像を働かせているのは間違いない。 「あっ、えっとね?うちのカフェ、二階でペンションとしても部屋貸してるの」 なんだ、そういうことか。 彼らの納得した表情がそんな台詞を物語っていた。 赤木はため息をついて肩をすくめる。 「駄目、かな。いろいろ話したいことあったんだけど」 雪乃が赤木の反応を見て眉を下げる。 久しぶりに会い、いろいろと聞きたいことがあるのはこちらも山々だったが、今は生徒会の旅行を優先させるべきだろう。 一応、自分と更紗のため、らしいからだ。 けれど、それを抜きにしても誘いに乗るべきか迷っていた。 どう返すべきか。 答えあぐねていたとき、意外な方向から声が上がった。 .
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