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蜜蜂を縛り付けている鎖を解き放つ。その時期が来たのだ。
「今頃何してるんだろな、あいつら」
夕月は口元を歪めた。
蜜蜂がその言葉に反応し訝しそうに眉をひそめる。
あいつら、とは言わずもがな赤木と雪乃のことだろう。
「何って」
「分かるだろ」
意地悪く目を細めた夕月に、ついと視線をそらした。生憎そこまで鈍くもない。
夕月の言ったことは自分ですら気付かず胸の奥底でくすぶっていたことだった。
あの二人はどんな関係なのか。
友達、ではないなら恋人?
あんなにあっさりと泊まるのを了承してしまうくらいなのだからかなり親密なのだろう。
もうずっと堂々巡りをしていて、その度につきつきと痛む胸とこの感情はどうすればいい?
「どうすれば」
「…は、」
「どうすれば、自分は赤木の一番近くにいれるの」
ただそれだけだった。
楽しそうに笑い、時折目が合って軽口を言い合う。
あの時。そんな二人を眺めていた自分はどんなに醜い顔をしていたのだろうか。
まるで自分の居場所を取られたかのように思ってしまった。
赤木の隣は居心地が良くて楽だった。安心して息をつける場所。一緒にいたのはたったの数ヶ月なのに。
自分は赤木がいないと駄目なのだ。
以前の持て余す感情を押し殺し、仮面のように笑顔を貼付けていた自分に戻ってしまう。
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