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どれくらいの時間が流れたのだろう。きっと数分にも満たなかったであろう時間がとてつもなく長い一瞬に思えた。 赤木が蜜蜂から視線をそらすように俯いた。表情を窺うことはできない。 それはまるで自分が拒絶されたようで。 実際そうなのだろうが。 予想はしていたが、やっぱり痛い。 足元の地面が崩れて落ちていくような、そんな気分。視界が真っ暗になる。 「…あ、迷惑だったよねごめん。ただ言いたかっただけだから。今の全部忘れてーー」 こんな時だけ薄っぺらい嘘で塗り固めた言葉がすらすらと口をついて出る。 本当は違う。全部嘘だ。 忘れてほしくなんかない。受け止めてもらえなくてもいいから。 だから。 思いが溢れて言葉に詰まる。声にならない。 強く唇を噛み締めた。 その一瞬。ふわりと落ち着く匂いに包まれた。 温かい。 「好きだ」 すっぽりと覆うように抱きしめられる。 耳元で囁かれる甘く優しい言葉。 これは全て自分の都合の良い妄想なのだろうか。 だって、こんな幸せなこと起こるはずがない。 ああでも、そうでなければいい。 「おい」 その呼びかけに顔を上げると少し不機嫌そうな顔。 「聞いてた?」 「…な、にを」 声がかすれていて、赤木はその体勢のままため息をついた。 耳に当たる柔らかい息の感触。 驚いて赤木を見ると、目元を指先で撫でられる。 いつのまにか頬を流れていた涙に気付き、反射的に目をつむった。 おもむろにその指先の動きが止まり、おずおずと赤木を見た。 そしてすぐに息を呑む。 .
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