44/59

3002人が本棚に入れています
本棚に追加
/304ページ
だって、蕩けるような甘い甘い笑顔を浮かべるから。 まるで…恋人に見せるような、そんな特別なもの。 引き込まれて目が離せなくなる。 「あと一回だけな」 赤木が目を細めて小さく囁いた。 何が、と聞き返す間もなく体を引き寄せられる。 顎を持ち上げられ唇が触れ合うまで数センチ。 鼻先がぶつかりそうなほど近くで、赤木の低い声が明瞭に響いた。 「好きだって言ってんだよ」 …はい? あんぐりと開いた口をそのままに、赤木の顔がうっすらと熱を持ったように見えたのは気のせいだろうか。 言わなきゃよかった、とか嫌われてしまった、だとか。 さっきまで渦巻いていた負の感情は吹っ飛んでいた。 「…もう一回、」 「言わねえよ」 間髪入れず返される。 うっ、と言葉に詰まった。 頭が混乱していて何から考えればいいのかわからない。 「…でも赤木の好きと自分の好きは違う、よ」 心の片隅でそんなこと、あるはずがないと否定している自分がいた。 赤木の好きは友達としてのものだろう? 「…あのな」 呆れたような、でも優しい声音。 「俺はお前の特別なんだろ?」 赤木の言葉を反芻して首を縦に振る。 そんなの当たり前だ。 みんなと一緒なわけがない。 「俺もそうだとは考えねえのか」 …そう? 「お前はもうとっくに俺にとっての特別になってる」 .
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3002人が本棚に入れています
本棚に追加