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「「あれー!?ユウくんいつの間に帰ってきたの?」」
開口一番がそれだった。
ベンションまで戻り、一階のカフェに姿を見せた赤木に双子はきょとんと首を傾げる。
それもそうだろう。
まだ早朝、双子たちは次の日が楽しみで目が冴えてしまいベッドから起き出した次第だ。
ということでカフェでくつろいでいるのは双子だけ。
「…なんではにくんも一緒なの?」
あれ、と満は声を上げる。なぜか赤木の背に隠れるようにして蜜蜂が立っていたのだ。が、表情は窺えず。
立ち上がった満が赤木の後ろに回り込み純粋な、そして当然の質問をぶつけた。
「はにくん顔真っ赤だよ」
「…あ、暑くて?」
「涼しいっていうか肌寒いくらいだけど」
…たしかに。
赤木をちらりと見ると我関せずといった様子で別の方向を向いている。
元はといえば赤木のせいなのに。
まだ数分前のできごとを思い出してはますます熱が上がる。
そんな百面相を繰り返す蜜蜂を面白そうに見つめるばかりだったのだ。
何か文句でも言ってやろうか、と口を開くも言葉は出ず。
ふとした瞬間に視線が交差する。
その度に結局何も言えなくなってしまうのだ。
これは思い過ごしというか、意識しているからなのか。
優しく目を細められ、纏う雰囲気がぐっと柔らかくなる。そういうことに鈍い自分でもなんとなく分かった。
今自分は甘やかされてるんだ、とか、恋人としての距離感とか。
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