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「…え、生徒会にですか?」
理事長の言葉に驚いた蜜蜂は思わず聞き返してしまう。
(もし生徒会に入れたら…)
「ああ。甥っ子がかわいい、っていうのもあるんだけどね。ちょっと事情があって。生徒会ならば統制がとれてるし、安心だ」
一体どんな事情だろう、と気になったがそれどころではない。
「ですが…っ」
「わかりました、彼を生徒会に迎えましょう」
「ちょっ…夕月!?」
了承の意を唱えた夕月に、反論しようとしたがそれはもう遅く。
「ありがとう。よろしく頼むよ」
会長がいい、と言ったのならば仕方ない。蜜蜂は口をつぐみ、いつもは穏やかな顔が少し歪む。
「…では、失礼します」
「ああ。わざわざ早い時間にすまなかったな。今日から仲良くしてやってくれ」
理事長室を出てから、蜜蜂はふうっとため息をついた。結局、編入生の彼はしゃべらずじまいだ。
「…どうして許可したの」
蜜蜂の少し尖った口調に夕月は苦笑する。
「むしろ、生徒会にいる方が危険かもしれない」
たしかに生徒会は統制がとれている。でも必ずそれに反発する生徒もいるのだ。
この全寮制男子校には様々な規則がある。
その中でもっとも厳しいのはやはり、生徒会関係の規則だ。と言っても、一応常識内のものがほとんど。
そして、規則を破る生徒ももちろんいない。
生徒会のメンバーは選挙で選ばれる。自己推薦、他推薦、ほとんど何でもありだが。
選ばれた者は仕事はそれなりにこなしているので、リコールなどもない。
けれど。
選挙で当選したわけではない生徒の場合は例外だ。
他のメンバーの仕事に支障をきたすかもしれないし、生徒の混乱を招く。
「やっぱりダメだよ…」
蜜蜂は心底苦しそうな顔で俯く。
「大丈夫だろ」
「でも…」
いつもなら、自分のいうことは何でも聞くというのに、と夕月は少し驚いた。
それほどまでに心配なのだろう。
ふっ、と彼は苦笑する。
でも、
「俺のいうことが聞けねーの?」
壁にドンッと蜜蜂を押し付け、耳元でしゃべる。
そうすれば、どうなるのかは分かっていたけれど。
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