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昔の出来事に思いを馳せていた蜜蜂の思考を遮ったのは周りのシーンとした空気だった。
先程まで編入生が来る、ということで騒がしかった教室はいつのまにか静まっていた。
「え、何あれ。オタク?」
「つーかキモくね?」
「ちょっと葉崎先生に近づきすぎ」
ぼそぼそとあちこちで聞こえる話し声。
それは編入生をおとしめる悪口ばかりだった。
…最後のは多分嫉妬だけど。
…この学園はそんなのばっかだ。
容姿、家柄で付き合う人間を決める。もちろん、それは当然のことだ。
今更、綺麗事をいうつもりはないけれど。
(その言葉が全部俺に突き刺さっているようで)
少し、痛かった。
「おまえら静かにしろつってんだろうが」
葉崎先生のキレぎみの声に、教室はまたもや静まり返る。
「ほら自己紹介しろ」
先生は編入生を促すように声をかける。
何故だろう、自分たちに対する時より口調が優しい気がする。
「…さ、佐伯すず、です。よろしくな…じゃなくてよろしくお願いします」
また忙しくなりそうだな、と漠然と彼は考えた。
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