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「えっと、よろしくね佐伯くん」
「佐伯じゃなくて名前で呼べよ!…っと間違えた、呼んで、ほしいです…」
なんで俺が編入生、佐伯くんとしゃべっているかって?
それは多分当然の流れで。
授業が終わったあと、葉崎先生は蜜蜂の席の前に立つ。
蜜蜂が顔を上げるとなぜか葉崎は笑顔。
「…あの、何か?」
沈黙に戸惑って口を開いた蜜蜂が負けだった。
「すず…じゃなくて佐伯に校内を案内してやってくれないか」
何故に呼び捨てなんだろう…と考えていた蜜蜂は少し反応が遅れてしまった。
「いいか?」
「はい、……って何がですか!?」
話を聞き逃した蜜蜂は焦りながら再度問い返す。
「いや、だってさオレのファンの子に案内任せたらどうなるかわかんないだろ?」
ちょっと自意識過剰な気もするが、たしかに自分が見てわかるぐらいに葉崎は佐伯に優しく接していた。
よっぽど大事なんだろう。
大体の事情を察した蜜蜂は了承の意を示した。
「あ、お前すずに手出すなよ」
この学校の特殊な性癖を知りつくしている葉崎は少し尖った声で言う。
「手っ、だ、出しませんよっ。な、何言ってるんですか…」
手を出す、という言葉に過剰に反応して顔を赤くさせる蜜蜂。
想像してしまったのか。その初々しい反応に葉崎はにやっと意地悪く笑う。
「ふーん、ウブだねえ」
「なっ!…もう行きますねっ」
若干頬を赤らめたまま、佐伯の席へ早足で歩いていった。
その背中を見ながら葉崎は考える。
こんな学園にいながら、何故あんなに純粋なんだろうか。
楽しい、からかいの材料になる、と葉崎はほくそ笑んだ。
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