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プロローグ 月の光~MOON LIGHT~
…ここはどこだろう。身体が軽くて、現実感がない…。
あぁ…そうか…これは、夢なんだ。
ふと、空を見上げる。
そこには、暗闇の中に浮かぶ一つの光…月が浮かんでいた。
僕は思う。月の光の色は、例えるなら「白銀」。
実際には、そんな色は存在しないのかもしれない。
だけど、夜空を照らす淡い月の光のように、冷たく、優しい色には、「白銀」という例えがぴったりだと思う。
ふと、僕の前から視線を感じる。
前を見れば、そこには水の中に浮かぶ一人の少女がいた。
その少女は、白く、透き通るような肌で、赤い目をしていて、僕を冷たく見つめていた。僕は、まるで月の涙から生まれたような錯覚を覚えた。いや、もしかしたら本当に月の涙から生まれたのかもしれない。
「キミは…誰?」
僕が問い掛けても、少女は答えず、無表情だった。
と―
僕の目の前の景色、全てが、目の前から遠ざかっていく。
「あっ!待って!!」
僕は手を伸ばして、その少女のもとに追いつこうとするが、少女は遠退いていくばかり。
少女は、変わらず、僕を冷たく見ていた。
そして、僕の身体はうまく言うことをきかず、いつのまにか水の中に沈み始めていた。
「くっ…この程度っ!」
僕は必死にもがこうとするが、身体は動かず沈んでいくばかり。
少女を見ると、その少女が…ほんの微かにだが、笑ったように見えた。
「きっと、また会えるから」
まるで、そんなふうに言っている気がして、僕は安心して目を閉じた…
……………
………
…
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