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そのとき、晃がゴールを決めた。
わぁっ……と歓声が上がり、晃はチームメイトとハイタッチをする。
多紀は嬉しそうな、しかし悔しそうな表情を浮かべてハイタッチを交わした。
ライバルとしている人が活躍するのは、やっぱり悔しいんだよね……
でも、チームとしてはプラスで嬉しいことだし…
多紀の気持ちは良く分かった。
こうして、前半は1-0という1点リードの形で終了した。
「晃ってば、すっかり格好良くなっちゃって…」
「さっきのゴール良かったな」
「うわっ、海斗くんいつの間に起きてたの!?」
あたしが独り言を呟いていると、さっきまで寝ていた海斗があぐらをかいて座っていた。
「ちょうど晃がゴールするところで起きた」
「そらまたダイジェストな部分を……」
「海斗さ―――ん!!」
突然、晃がベンチから叫んだ。
振り向くと、手をブンブン振っている。
「見ててくれました!?」
「おぅ、バッチリ!」
海斗はあたしの方に寄り掛かりながら答えた。
バッチリてあんた……
たまたまでしょうが。
「マジですかー!
感激です!!!」
一体何が感激なのか……
あいつ、本当に龍と海斗くん好きだよね。
ふと他のメンバーを見てみると、多紀がじっとこちらを見ていた。
何だか眉間にシワを寄せているようだが、何かあったのだろうか……
あたしは頑張って、と口パクで伝えた。
それを見た多紀は、小さく頷いて目を逸らした。
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