汗も滴る良い男達

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そのとき、突然多紀が豪快に転んだ。 「…………!?」 どうやら、抜かれたときに脚が絡まってしまったらしい。 相手は何とかバランスをとり、大丈夫だったようだ。 「バカヤロ―――!!!!!!!何してんの!!!! あんたたち格好悪いわよ!!!!」 いきなり叫んだあたしにかなり驚いた海斗は、肩をビクッと震わせる。 グラウンドが静けさに包まれる。 会場のみんながこちらを 凝視していた。 「馬鹿………っ」 気付いたら、あたしは走っていた。 後ろから海斗の呼ぶ声がしたが、それよりもこっちの方が気になった。 ベンチに向かうと、多紀が監督の隣に座って脚を抱えていた。 呆然と立ち尽くすみんなにイラッときて、あたしは一喝した。 「1点取られたぐらいで何へこんでんの!! この世の終わりみたいな顔してないで、早く切り替えなさい! 声もっと出して!!それだけでモチベーションが変わるから!!」 それだけ言うと、あたしは多紀に向き合った。 「大丈夫、多紀くん?」 しゃがみ込むと、膝から血を流していた。 背後では、試合再開される笛の合図が鳴り響く。 多紀は頷いた。 「ただのかすり傷だ。すぐに戻る」 「そう、良かった」 鞄から手当ての道具を取り出す。 多紀はおい、と呼び掛けた。 「まさかあんた、手当てする気か?」 「当たり前でしょ。小さな怪我でも、手当ては必要だからね」 側にいた監督が声をかけた。 「君は一体、誰なんだ?」 さっきからの騒動で困惑しているようだ。 「あー、すみません! あたし、晃の姉の美月です。先程は無礼な真似をして申し訳ありませんでした!」 頭を下げると、監督がワハハと笑い声を上げた。
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