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「噂の晃のお姉さんでしたか!
いや、さっきのはすごかった!!」
監督は腕を組んで、品定めをするかのようにあたしを見た。
「う、噂………?」
あたし、なんか噂になってんの?
何もしてないんだけどなぁ……
「いつも晃の怪我の手当てをしてあげてるそうで………美人お姉さんと評判が良いんだよ」
「そんな……」
「それにしても、さっきのはありがとう。
俺が言おうとしていたことをはっきり言ってくれて……」
さっき………
って………あっ!!!
「うわぁ!!ご、ごめんなさい!よく考えたら、ああいうのは監督が言うものですよね!?」
あたしってば、関係者でも何でもないのに、あんな偉そうに!!
監督はゆっくり首を横に振った。
「いいや、どうせ俺が言ったところで、あいつらの耳には入らないだろう。
……いつも同じようなことを言ってるからな。
でも、君が言うことで部員はみんな新鮮さを感じたはずだ。
………その証拠に、ほら……」
監督はグラウンドを指差した。
そこに目をやると、さっきとは打って変わって、みんながイキイキとプレーしている。
「おっしゃ、一本取り返すぞー!!」
「おうっ」
叫び声が飛び交い、みんなが走り回っていた。
「あいつら、美人にはめっぽう弱いみたいだな」
くっくと喉を鳴らして笑う監督は、多紀をチラリと見た。
「どうやら、お前も……………な」
ニヤッと笑う監督を余所に、多紀はフンッとそっぽを向いた。
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