汗も滴る良い男達

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監督は盛大に笑ってグラウンドの方に向かって行った。 「そこだ!攻めろー!」 監督が叫ぶ。 その声はみんなと同様、イキイキしていた。 「お……っと、手が止まってた……ゴメンっ」 多紀の手当てを再開する。 多紀はじっとあたしを見下ろした。 「……情けないな」 握りこぶしを作り、ブルブル震わせる。 「ホント、情けないよねー」 ため息をついて多紀を見ると、少し驚いているようだった。 心なしか、傷付いているようにも見える。 あたしはクスッと笑った。 「だから、これから頑張って失態を取り戻さないとね!」 「…………!」 多紀はハッとした顔をして、グラウンドを見つめた。 そして、あたしに目を戻す。 「なるほどな」 その表情は、自信に溢れていた。 「ここで取り返さないと……俺自身が許せない」 「うん、良い顔してる。 その調子だよ。 ……はいっ、できた!」 手当てが終了し、多紀は立ち上がった。 「悪いな」 「どういたしまして」 多紀は一瞬、あたしを抱きしめた。 「!?」 ほんの一瞬で、抱きしめたのかどうかも分からないが、ほのかに汗の匂いが鼻を掠めた。 「じゃあな」 それだけ言うと、多紀は行ってしまった。 「なに、今の………」 呆然として呟いた。 今、抱きしめたの? え……そうなの!? なんで!?
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