四章‐彼方の空に‐

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小さな体には似合わないその長い木製の剣は、彼の足をコツンと叩いては、切っ先がゆらゆらと頼りなく揺れていた。 そしてまた、小さな体はペタリと尻餅をつく。 「もっと短い剣にしたらどうだ、ソロネ?……」 先程叩かれた足を気にすることもなく、少年はその緑の芝生に座り込むソロネへとそう言い、ソロネの両脇を持って軽々と立ち上がらせるのだった。 「うー……」 立ち上がりながら、ソロネが唸る。 まるで嫌だと言うように……というより、もはやまるでではなく、その唸りは少年の言葉に嫌と言っているようなものだ。 そして、少年はまた苦笑いを浮かべ、ソロネに向けて木製の剣を緩く構えるのだった。 「ソロネくん、頑張って下さいな。サウルさんにならきっと勝てますよ」 その二人の様子にまた別の少年が声をかけると、今まで剣を構えていたサウルがそちらへ向く。 そして長椅子の端っこに座ってこちらを見つめ、まったりとニコニコする少年を睨みつけた。 しかし、少年はサウルの眼力に圧されるわけもなく、隣に座る少女へと向き直るのだった。 そのシリウス王国の伝統様式の白い衣服を着る少女、アリスへと。 「すみませんねアリスティア殿下、ソロネくんが押されているようで……」 「フフ、アリスで良いよ、リオ?」 親しい者に、殿下や様などと呼ばれるのはぎこちないらしく、アリスはそうリオへ言う。 と、これにはリオはちょっと考えながらも、しかし後には頷いているのだった。 「ソロネくんは疲れないんでしょうか?もう一時間はサウルさんと遊んでおりますが」 「まぁね、小さい子は元気だから、一時間でも二時間でも遊んでるよ」 長い剣を重たげに振り上げながら、またサウルへ突撃するソロネを見つめて、アリスはゆったりとした微笑みを浮かべる。 サウルは一応に当たってあげるが、しかしやはり剣が重く、ソロネは剣をサウルのお腹へぶつけた反動で、よたよたと足を不器用に歩ませていた。 と、またペタリと尻餅をつく。  
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