四章‐彼方の空に‐

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「……にしても、アリスさん。一旦はエターナルへ戻り、またシリウスへ参られて……ずいぶん前とお変わりになりましたね?」 「んん?なにが?」 「やっぱりソロネくんの影響でしょうか、女神のようになってしまって」 「えー……じゃあじゃあ、前はどうなのよ?」 「あ、別に悪い意味では無いです。前のアリスさんは、元気が良くて、明るくて……でも、今は以前よりも、しおらしいと言うか、マッタリとしていると言うか……」 自分で言っておきながら、まだ何か疑問そうな表情で話すリオに、アリスは苦笑いを浮かべた。 その笑みには、リオもまた何か申し訳なさそうに苦笑いを返すのだった。 そしてまた気を取り直すように、リオは微笑み。 「とにかく今のアリスさんは今のアリスさんで、とっても良いお方です」 「フフ、ありがとう……まぁ、これはソロネのおかげ…かな?」 再び剣を持ってサウルに突撃するソロネを愛おしむように見つめて、アリスは話した。 その話、そのアリスの様子に、リオは先程あまり釈然としなかったアリスに対する雰囲気の表し方に、一つの答えのようなものを見出す。 そうだった、アリスは母親になったのだと。 自らの子供を持ったから、こんなにもアリスは変わった。 以前までは単なる少女であった。しかし今は、一人の母親のような柔らかく温かい感覚が、このアリスを包み込んでいた。 だからこそ、今のアリスは愛情という形の安らぎ、しおらしさを湛えている。 それもこれも、やはりソロネのおかげ。 アリスと同じようにソロネとサウルのやりとりを眺め、リオは心底安らいでいた。 このアリスの抱く感覚、まるでこちらの胸の奥にまで伝わるようなものだった。  
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