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「うー…勝てません……」
また何度目か、柔らかな芝生に倒れ込み、たまらずソロネは声を上げた。
その弱々しいソロネの声に、アリスは立ち上がり、ソロネのもとへと寄る。
「稽古する内に、いつかは強くなれるから、頑張って?」
しゃがみ込み、ソロネの頭を撫でてアリスは微笑みかける。
と、ソロネはコクリと頷いて、重たい剣をなぜかアリスへ渡す。
当のアリスは、何事なのかと首を傾げ、剣を手にする。
すると。
「母上さまは、勝てますのですか?」
「さぁ……どうだろうね」
勝てるに決まっている。
そう、アリスとソロネの二人を見つめながら、心の内で言い切るサウル。
このアリスの実力、いくら今はこんなにおっとりとしているとは言え、いざとなったら脅威以外の何物でもない。
それを分かっているのだから、サウルは……。
「い、いや……まさかアリスが相手になるわけじゃあ…ないよな?」
いくら遊び程度の稽古だとは言え、相手がアリスでは遊びでは済まない。
できれば相手をしたくないのだが……。
しかしながら、ソロネはサウルの言葉に、ムスッとした表情で頷いたのだった。
「おい、アリス……マジでやるのか?」
「久しぶりにやってみようかな?ソロネも私が戦う所は見たことないしね」
こちらはソロネとは打って変わり、ニッコリと笑みながらアリスは言う。
だが、やはりサウルにとってはため息しか出ない……。
「サウルさーん、アリスさんは仮にも皇族ですからねー。怪我させたら大変ですよー」
と、リオが余計な忠告をする。
「何でお前!稽古する前からそんなおっかねぇこと言うんだよ!?」
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