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「言いますよ。アリスティア皇女殿下はエターナル帝国の皇族……それを高々大尉の者が傷つけるなど」
「サウル、私は大丈夫だよ?思いっきり打たれても気にしないから」
リオとは裏腹にそう言ってくれるアリスだったが、どちらかと言うと、サウルはリオの話ばかりを気にしていた。
いくらアリスが許すと言っても、やはり実際の所はその程度で済むような話ではない気がしてしまい……。
木剣を握る手が強張り、サウルはソロネの前にしゃがむアリスに向きながら、ため息をついた。
と、そこでアリスが立ち上がる。
「ほ…本当に……何もないよな?」
やっぱり心配で、改めてアリスへ問い掛けてみる。
しかしながら、アリスはまったりと微笑みながら頷くだけだった。
その頷きに、サウルはまたため息をつき、だが剣はキッチリ構える。
共に、アリスも剣を構え、切れ味の微塵もない切っ先を揺らめかせることもなく、サウルに翳す。
尚も微笑みを浮かべるアリスだが、それは見た目であり、雰囲気だけは一気に変わる。
殺気ではないが、まずサウルの身に感じる感覚は緊張を覚えさせるものだった。
サウルの額に、冷や汗のように嫌な汗が微かに湧く。
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