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「ほ、本当に良いのかアリス?」
単なる稽古とは言え、本当に他国の皇族と戦っていいものか、やはり心配。
だが、そんなサウルの心配などいや知らず、アリスはまた麗美に微笑むのだった。
「また本当の戦争があったら、私も出るつもりなんだから。私だって稽古ぐらいしないと」
「そ…そうか……なら」
何かしら意を決するように頷き、サウルは木剣を改めて構える。
そして、アリスとの間合いをとりつつ、隙を探るようにじっと見つめた。
当のアリスは、微動だにせず、剣を翳したきりで動かず。
その様子に、だが一方のサウルは、地面に綺麗な緑を醸す芝生を踏みながら前へ出た。
そして、走り込み様に木剣を横薙に振った。
しかし、その一撃はアリスがすぐさま自らの木剣にて受けきり、切り返した。
素早く弧を描きながら繰り出されたアリスの剣に、だがサウルも負けず劣らず即座に受けきり、一旦は退く。
しかし、そこをアリスは狙う。
サウルが引き下がるとほぼ同時に、アリスは踏み出し木剣の切っ先をサウルへ構え、一瞬の内に突き出した。
「うわッ!?」
突き出された剣に、サウルは危うい所で剣を払うも、体勢を崩し微かによたつきながらまた引き下がった。
しかしアリスは再び踏み出すと、今度こそ剣の切っ先をサウルの胸目掛けて突き出し、ドスッと鈍い響きを上げながら衝突させたのだった。
胸に入り込む衝撃と激痛に、たまらずサウルの呼吸が止まり、そのまま更に後ろのめりに倒れる。
その様子にアリスは微動だにせず、ただただ剣を突き出した体勢のままで、サウルが柔らかい芝生の上に背中を打つと共に、ゆっくりと構えを解くのだった。
そのアリスの背後にちょこんと立つソロネは、呆気にとられながら風に靡くアリスの髪を眺めるのだった。
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