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「ずいぶん、あっさり決まりましたね」
クスクス笑い、リオが地に伸びたサウルを見つめ、皮肉たっぷりに言う。
しかしながら、サウルはその皮肉に応えるどころではなく、必死に呼吸を確保していたのだった。
それをちょっとだけ申し訳なく見つめ、アリスがサウルへ寄る。
「サウル、大丈夫?」
「…ゲホッ!……ゲフッ!」
アリスが声をかけるも、やはり応えられるわけもなく、サウルは大いに咳込んでいた。
「ありゃりゃ……やっぱりだめよね……」
「まぁアリスさん、お構いなく。サウルさんも軍人なのですから、この程度は痛いの内ではないですよ」
ならなぜサウルは今正にもがき、のた打ち回っているのか……。
と、まだ苦しがっているサウルだったが、リオがそう言い切ると、涙目になりながらもリオを睨んだのだった。
しかし、リオはそんな目などいや知らず……いや、知っているのだろうが、構うこともなく、アリスの背後に居るソロネへ寄るのだった。
いきなり寄ってこられ、ソロネは自分より背の高いリオを見上げながら、水が煌めくように澄んだ深い青の瞳の中に、彼の翡翠色の瞳を混ぜて見つめるのだった。
と、リオも瞳にソロネの姿を写しながら、ニッコリと微笑む。
「さぁ、ソロネくん、剣のお稽古は終わりですよ。次はボクとお勉強しましょうか?」
そう言いしゃがみ込み、ソロネの小さな肩に手を置いた時、ソロネが退いた。
そのしぐさは、無論のこと勉強からの逃避である。
しかしながら、そこはアリスがソロネへ言い聞かせた。
「ソロネ、ちゃんとお勉強しないとダメよ?母さんも、たくさん勉強してきたんだから」
それを聞き、「ある意味、アリスがそれを言う資格があるのだろうか?」などと、まだ苦しげに胸を摩りながら座り込むサウルは、一瞬なりに思う。
サウルも理解しているのだが、アリスは至る所でバカだったりするのだから。
しかし中には、アリスだって皇族らしい知識や知恵は備わっていたりするのだが……至る所でダメだったりするのだ……。
だが、相手は少なくとも皇族の中の皇族……間違っても今の思いを口にはしない。
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