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「さぁさぁ行きましょう、大丈夫ですよ、ボクはバルト教官みたいに怖くはないですから」
「は……お前…時によっちゃバルト教官より最悪だろうが……」
もう呼吸も楽になったころ、まだ座り込みながらもサウルはそう囁く。
その囁きがリオには聞こえていたのか、ちょっとサウルへ向き、微笑みながらもとてつもなく鋭利な視線を飛ばした。
その痛い視線に、ギクリとサウルは肩をびくつかせる。
サウルの強張った肩を見るや、リオはまたやんわりとした笑みに戻り、ソロネへ向き直るなり、ソロネの小さく温かな手をそっと掴み、城内へと連れていくのだった。
当のソロネは、まだちょっとだけ不満そうにしながらも、やはりバルトよりはマシだと理解するのか、リオに連れられて行くのだった。
と、リオはアリスへ振り向き、お任せをとでも言うかのような笑みを浮かべた。
アリスは城へ向かう二人を、なんの心配もなく見送るのだった。
今回だけではない、リオには色々とソロネへの勉学を任せているのだ。
残されたアリスは、風に靡いた髪の一本一本を掻いて、視界の中から払いながらソロネの背をまた愛でるように見つめていた。
「お前……やっぱり強いな…」
ソロネの背を見つめる中で、アリスはそんな声をかけられ、立ち上がり様のサウルへと視線を向ける。
当のサウルは既にアリスへ向き、ため息らしい呼吸を一つつきつつ、軽く土と草の着いた軍服を掃うのだった。
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