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そう言うと、サウルは一つばかり背伸びをして、何か辺りを見渡した。
その様子に、アリスは何事かと。
だが、やはりこれといってなにもなく、サウルは再びアリスへ向くのだった。
「アリス、リドと一緒じゃなくて良いのか?」
「え?」
「お前、リドと一緒に仕事とかないのかよ?……まぁ、無いとは思うが……」
「私は仕事なんて無いよ」
そこまで言い、ふとアリスの表情に変化が及んだことにサウルは気が付く。
何か影を宿すように、微かに暗がりを浮かべる表情。
「どうした?」
その表情に、サウルはそう問い掛けた。
すると、アリスはちょっとばかり顔を明るげに笑ませるも、言葉ばかりはそうも明るくはなかった。
「何だか、遠くなっちゃったかな……なんて」
「何が?」
「……ううん、何でも無いの。大丈夫」
また微笑み、今度は影は無かった。
しかし、何か空洞のような虚無感らしい感覚が、その表情には写っているような、サウルにはそんな気がした。
と、アリスはもう何も言わずに歩き出す。
城へ向かって歩き出したアリスに、サウルは先程の影を見出だすことはしないながら、その背中を見つめ、また別におかしな感覚を感じていた。
遠くなった、とは何なのだろうか。
アリスに聞こえるか聞こえないかぐらいに軽く喉を唸らせ、サウルは首を傾げながら、アリスから目を離し、別の方向へと歩き出した。
これから、仕事だ。
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