四章‐彼方の空に‐

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「ああ、この子はですね、ミトラさんのジャンヌちゃんです」 ジャンヌ……。 「まさかブルーベリーをペットにしてるワケじゃあ……ないよな?」 だいぶ小さな植木鉢に入った、メロンほどの実のブルーベリーを見つめながら、サウルは苦笑い。 「ええ、ペットと言いますか、敢えて言うと研究資料でしょうかね。エターナル帝国の、東フォルレマニス地方の固有種でして」 そんなブルーベリーの産地がどーのこーのなど知ったことではないが、この少女、リリィがブルーベリーに腕を噛まれて尚無事なのは何故なのか。 軍服の上からでもリリィの腕の細さはよく解るが、しかし折れている様子もない。 ついでに、ブルーベリーの顎の力は50キロだ。 なのにやはり傷らしい傷も、血も何も出ていない。 それは何よりだが、サウルは微妙な冷や汗のようなものを額に浮かべていた。 そのサウルのヒヤヒヤしている様子にリリィは気づいたのか、或いはサウルが噛まれている腕を凝視している故なのか、何やらリリィは微笑みかけた。 「この子に噛まれても怪我はしませんよ、この固有種の特徴で歯は無いですし、顎も発達してませんので」 「そう…なのか……つーか、蔦が……」 更にサウルがヒヤヒヤしていた理由がそれだ。 普通、ブルーベリーは茎の根本に二枚の巨大な葉を付けるのだが、そのブルーベリーは葉では無く異様に長い蔦を持っており、その蔦がリリィの首に巻き付いていたのだ。 これは、微動だにしないリリィが信じられない。 だが、リリィは尚も平気そうで。 「大丈夫です、躾されてますから」 そう言うのだが、躾されても噛み付くとはどういうことか、サウルには理解できる所ではなかった。  
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