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暗がりの中で小一時間も待つのは、何か陰欝とした気分を募らせるものだった。
冷たい大理石の石壁に背中を冷やしながら、アルフェリオはあくびを一つと身じろぎをして、向かい側の壁に同じように、しかしこちらよりは落ち着いて立つ少女を見つめていた。
先程までこの廊下に差し込んでいた陽の光も、雲に陰ったわけでもなく、既に時間が時間故、必然的に窓から差し込む気配はない。
と、またアルフェリオがあくびをした所で。
「もし……」
ただ一言だけ口火を切り、向かいに立つ少女がそう口を開いた。
その言葉に、アルフェリオはあんぐりと開け放たれていた口を閉じて、何事かとその様子をうかがう。
「この孤児院に何かしらの疑惑がないならそれで良いが、その後はどうする?」
「どういうことだ?」
「他に、東方聖堂騎士団で思い当たる所はないか?」
問い掛けられ、アルフェリオは深呼吸と共に黙り込む。
東方聖堂騎士団の動きは、至極インドアなのは良く分かっている。だからこそその騎士団に関係する話に繋がる糸口というものが掴みにくい。
この孤児院視察とて、ただ孤児が居るからという理由で、無理矢理それを東方聖堂騎士団と関連付けたにすぎない。
そもそもあの組織を探るなど、至難の技なのだ。
「まぁ……しかしどの道、いずれかで糸口は掴めるだろう……組織自体が怪しい組織でないと銘打つ以上、公に晒す所は確実にある……それが表向きとてな」
「つまり……表向きから裏を探るってか?それじゃあこの調査と同じだろう」
「フフ、まぁ結局の所はそこに行き着く。いきなり裏に足を踏み入れられる程、安易な組織でもなかろう」
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