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女性に誘われるままに廊下を出ると、まず見えたのは噴水であった。
ここは、中庭らしい。
広い中庭は、あの暗い廊下とは一変して、陽の光が満々に降り、リーヴァ達が今立つ場所より、数十センチほどの段差で凹地となっていた。
ある程度の草木が植えられた庭園で、小さな水路と、それに渡された木質の橋もあり、水路はこの孤児院の下へ流れ込んでいる。
リーヴァもアルフェリオもそうだが、ここは誰が見ても良い場所だと確実に思える孤児院だ。
とは言うものの、個人ではなくシリウス王国が創ったのだから、建物や内装が悪いわけがないのだが。
その庭には、やはりと言えばやはり、子供達が居る。
種族や人種はバラバラ、その多種多様故か、年齢の差も見分けが付きにくい子供達が遊んでいるようだった。
その様子には、アルフェリオは自然と落ち着いて微かな笑みを浮かべていた。
だが、リーヴァはこれといって笑うこともなく、その様子を何か考えながら見つめていた。
二人はそのまま、その中庭を回り込むように庭沿いの廊下を行き、とある扉の前で立ち止まらせられた。
その扉は、やはりこの孤児院の造りの良さに見合う綺麗な浮き彫りの彫刻がなされた扉。
「ここにこの孤児院についての資料や、これまでの経歴が納められております」
「改めて聞くが、勝手に入っても良いのか?院長の許可もなしに?」
「わざわざ騎士様が視察に来られたのですから、お引き取り願うのも失礼だと思いまして」
この女性、ずいぶん良くできている。
それは何よりなリーヴァは、頷きながらさっそくその部屋の中へ案内して貰う。
中は天井に電気が燈されており、部屋の壁全体が本棚で、その本棚全てに書物や巻物が収納されていた。
よく整理されており、こんな場所にも関わらず、埃の一片すら見受けられない。
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