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「それでは、まるで私が異常であるみたいじゃないですか」 僕は医者に迫って、叫んだ。カーテンの向こう側にいる看護婦が二つの眼をこちらにむけているようだ。それはカーテンを透かして、まるで赤外線のように僕をその眼に投影していた。苦痛であった。 医者は「とりあえず薬を出しておきます」といってカルテに、無機物突発異常性愛症、と書いた。たしかに僕は、今直ぐにここをでて、彼女に会いに行きたかった。 風の吹くような曲線と、濃淡のはっきりした姿、粗削りであるのが、ぬらりとしたものより存在感があって尚良い。僕の彼女は崖であった。
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