光に闇が差し掛かる頃

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…―イオ―… …―イオッ―… 悪夢の手から逃れようと身を捩る。唇を噛み締め、枕に爪を立てながら短く呻く。 嬉しそうな声が、悲しそうな声が、怒ったような声が、様々な声が耳を侵す。当の昔に忘れた筈の声が心臓を掴む。……きつく……きつく……。 「イオッ!!」 現実の、本物の声に名を呼ばれて飛び起きた。汗が体を伝い、心臓は狂ったように脈打っている。 ――まだ、生きている 「大丈夫か?魘されてたけど」 自分が何処にいて、自分が今は何なのか思い出してイオは笑った。 今、俺は学生で、コイツはルームメートのキオーンだ。 「平気だ。悪かったな、起こして」 「恐ーい夢でも見たのか、イオくーん?」 小さな子供に言うときの様な口調でそう尋ねてきたキオーンに枕を投げつける。笑いながらそれを受け止めると投げ返してきた。 「恥ずかしいんですか~?」 「それ止めろって」 枕を投げ捨ててキオーンに掴み掛かって、そのまま取っ組合いになる。 「お前ら、何時だと思ってるんだ!!」 勢い良く扉が開いて、入ってきた人影がそう怒鳴った。
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