光に闇が差し掛かる頃

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周りの生徒も、そわそわと時計を見たり、教科書類をしまいだす。 「えー、では今日はここまで。居眠りしてたキオは残ること」 教師の言葉でキオーン以外の奴らが笑う。サピロスは嬉しそうに笑い、ステファノスも苦笑いしている。 「ちょ、先生、勘弁して」 「居眠りするお前が悪い」 手を合わせるキオーンを一言で片付けて帰る準備をしろと言う。 そろそろだ。 突然、頭痛と目眩を覚えてしゃがみ込む。他の生徒も頭を抑えるか、俺と同じようにしゃがんでいる。 『やぁ、世界中の皆さん』 頭の中に響いた声に誰もが身を震わす。 「何、これ」 「っ、テレパシーか」 感情のこもらない、空っぽの笑い声が響いた。 『驚くのも無理はないだろう。今、世界中の人間、魔族、天使、全ての生物が俺の声を聞いていることになる』 驚きの声が上がる。世界中の人間に同時にテレパシーをかけるなんて、国中の魔力を集めたって無理だろう。 それをやっていると、その声は言ったんだ。 『本題だが、俺達は世界を滅ぼす』 「な!?」 キオーンが息を呑んだ。キオーンだけでなく、世界中の人間が同じ行動をとった筈だ。 『俺達は、世界を滅ぼし、地上の楽園(ヘ・アトランティス・ネーソス)を築く。全てのハーフ、魔物のための世界だ。虐げられるのは、俺達ではない、俺達を虐げてきた奴らだ』 クラス中の視線が、俺に集まる。キオーンも、目を見開いて、俺を見ている。 お前らの、そういう目が嫌いなんだ。 声はため息を零すと、言葉を続けた。 『世界中の虐げられている者供よ、今こそ立ち上がるときだ。復讐をしようじゃないか』 最後に笑い声を残して、声は消えた。 「イオ……?」 復讐。復讐!! 俺を、そんな目で見るな!! 畏怖でもない、軽蔑でもない、見下したような目で、俺を見るな!! ……だが、今はまだその時じゃない。 まだ、俺はここにいなきゃいけない。
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