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夢
私は、帰るとすぐに風呂に入り、床についた。
私は夢をみた。混沌として、不鮮明な世界にいる夢だった。赤と緑が入り混じった空間に独り立っていたかと思うと、いきなり遠くに3人の人影が現れた。3人の人影は、もの凄い速さで私の所に近付いて来た。私はその3人が一連の事件で殺された3人だと解る。しかし、そこに長谷川の姿はなかった。
「長谷川はどうした?」
3人は無言だったが、やがて焦点の合わない虚ろな目を私の後に向けた。
そこには、影があった。真っ黒で不定形だった。しかし、苦しんでいる事が解った。私は、弟に問いただした。
「あいつは……誰だ?」
弟は呟いた。
「長谷……川だ……」
「長谷川……だと?なぜあいつは苦しんでいる?」
「……糾き……が……聞こえ……るのかい……兄さん」
私が更に聞こうとすると、弟の横にいた長岡が呟いた
「ヤツが……ヤツが長谷川の魂を……」
私が怪訝な顔をすると、今度は御手洗が呟いた。
「恨みが……苦しみが……」
「長谷川に……取り付いて……いる……。長谷川を装い……次は……」
そこで、目が醒めた。時計は午前2時を指している。体が動かない。金縛りだろうか?しかし、生理的なものとは違った。おかしい、まだあと4日ある。それに、電話がある筈だ。そう思った瞬間…………
「!!!!!」
そこには長谷川が…いた。生前浮かべた事のない歪んだ笑顔で私に話しかけた。暗闇で顔は良く見えないが、目が赤黒く輝いた。
「あと…4日だね…。君の喉を引き裂くまで…」
そう言うと、長谷川は手を振り上げた。私の腹に、熱い衝撃が走る。どろりと生暖かく細長いモノが脇腹を伝って布団の上に着く。食道から喉元を伝い、口の中に熱く、鉄臭いものがこみ上げてきた。
そして長谷川は笑いながら天井に吸い込まれて行った…。
私は、気付くと凄い寝汗をかいていた。
「夢だったか…」
私は起きて布団を畳もうとした瞬間、布団から一間ほど飛び退いた。……布団が赤黒く染まっている。今まで寝汗だと思っていたものは、果たして血だった。私はめまいを覚えながらも、布団を処理し、シャワーを浴びた。
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