親愛なる…

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 事件から丁度一週間がたった。私は休みだった為寝間着姿のままリビングで煙草を吹かしていた。今日こそは元井さんの襲来もあるまい。彼女のマシンガントークはまさにマシンガンそのものと同等の威力を持つ。  1本目を吸い終え2本目に移ろうと、煙草をくわえライターに手を伸ばした瞬間に電話が鳴った。 「また休日出勤か?」 そんな事を思いながら電話の受話器を取ると、電話の向こうにいたのは意外にも母であった。 「どうしたの?何かあった?」 私は何気無く聞いた。 「あ……あの……あのね……」 「どうしたの?落ち着いて話しなよ」 普段はひょうきんな母が、明らかに動転気味だ。 「あんたの弟が……秀和(ひでかず)が……」 「秀和がどうしたのさ?」 「殺された………」 「………」 「………」 沈黙が続いた。長い沈黙の後 「とりあえず、そっちに戻るよ」 と言い、受話器を置いた。  私の実家は、住宅街から40km程離れた都市の近郊にある。私は電車に乗り、最寄りの駅で降りた後バスで実家に向かった。  実家に着くと母が沈んだ顔で出迎えた。その後、弟が遺体で発見された時の状況が説明された。発見されたのは4時間程前で、弟の自宅で倒れていたという。そして……遺体は皮膚が剥ぎ取られ、声帯がえぐり取られていたという。  そこまで話したところで、警察が来た。司法解剖と部屋の調査が済んだらしい。  警察官は淡々と詳しい状況について述べ始めた。 「死亡推定時刻は深夜2時頃、死因は勁動脈を切り裂かれた事に因る失血死です」 「そうですか…」 警察官は、更に続けた。 「…あと、遺体の近くには先週殺された御手洗さんの皮膚と声帯がありました。…奇妙な事に、それらはまるでつい先程殺されたかの様なのです」 「…というと?」 「組織がほとんど死んでいないのです。ホルムアルデヒドやエタノールも検出されませんでした……」  私は青ざめた。弟は何に殺されたのか?まさか……
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