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プロローグ
「やっとお呼びか……
あんまり遅いんで、酒が無くなっちまったぜ」
持っていたボトルを投げる。
ビンは落ちた衝撃に粉々に砕け散った。
酒が無い事にイライラするのか、直ぐに代わりとなるシガー(煙草)に火を灯した。
一般的にコンビニや自販機で売っているような、白い紙に巻いた紙巻き煙草ではなく、これは黒い紙巻き煙草だ。
恐らく特注かハンド・メイドだろう。
『すみませんね。
わざわざ貴方を呼び出して』
何処からともなく声がする。
「悪いと思ってんなら酒と飯だ。
それで許してやる」
魔帝が右手を、人差し指と中指に煙草を挟んだまま突き出す。
『ええ、用意しておきました』
「用件は何だよ」
『煙草――……』
「あん?」
『結局辞めなかったんですね。
以前、辞めると言ってませんでしたか?』
「辞めるのを辞めた。
別に勝手だろ、俺の。
お前にとやかく言われたくない。
第一、どうせニコチンやアルコールでくたばる身体じゃねえんだ。
問題ねえ」
煙草を吐き捨て、靴の先で踏み消す。
グリグリと足を捻りながら「んな小言を言う為に呼んだのか」と魔帝が言った。
『そんな事はしませんよ。
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